
遺言を残す意味は、「相続を争続にしない」ことに尽きます。高齢化社会の到来や権利意識の高まりから相続人間の争いが激増しているなかで、遺言は正にこれを防止するための方法なのです。
しかし、遺言について一般的に次のような感想をお持ちではないでしょうか。
「遺言を残すほど財産がないから必要ない」
「うちの家族は仲がいいから争いになんかならない」
実際に遺言書についてお話するとき、10人中7~9人の方がこのように答えますが、数多くの相続(争続)の現場を目の当たりにしてきた経験上、これらの考え方は危険と言わざるをえません。
まず、財産の多い少ないは、相続争いが生じる可能性にあまり影響を与えないと言えるでしょう。財産を相続する場面に出くわしたとき、一般に「いくらの遺産がもらえるのか」と考えるのではなく、「遺産がいくらあって、そのうちのいくらを自分がもらえるのか」と考えるものだからです。何の前提情報もない状況で「あなたが相続する財産は1000万円です」と言われても、納得できるものではありません。それが1億円でも同じです。 遺言を残していれば、通常、全財産を明記しますので、各相続人の相続する遺産が明らかになり、「遺産は全部でいくらあるんだ?」という相続人の疑問を解消することができますので、円満な相続になります。
また、現在、相続人同士の仲がいい場合でも、相続をきっかけに感情的な対立が生まれることは珍しくありません。「私が一人でお母さんの面倒をずっと見てきたのに何で皆と同じ分しかもらえないんだ」といった感情的な対立から相続争いになることを避けるためにも遺言を残し、さらに遺言を残した理由や相続人に対するメッセージを残しておけば、より相続人の納得性を高めることができますので、結果として争いを避けることができるのです。
特に、次のような類型に該当する場合、争いになる可能性が高いため、遺言を残すことお勧めします。
そして、何よりも、家族やお世話になった方々に、自分の最期の思いを伝えられるのが遺言を残す最大の意味ではないでしょうか。遺言は、自分の財産やメッセージを贈ることを通じて、生前お世話になった方への御礼や子どもたちに対する期待、場合によっては生前の過ちに対する謝罪など自分の正直な気持ちを伝えることができる唯一の方法です。