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相続放棄の事例

事 例

相談者はSさんとTさんです。SさんとTさんは姉妹で、父親が突然亡くなりました。母親は数年前に他界していて、Sさんは既に独立し、Tさんは嫁いでいたため父親は一人暮らしだったそうです。父親は決して裕福とは言えませんが、少ない収入ながらも慎ましく生活していました。 突然の悲しみにも耐えて葬儀を終え、その後49日法要の予定でも立てようとしていた頃、Sさん宛にある1本の電話がありました。  相手はある大手消費者金融会社名を名乗り、話の内容は次のようなものでした。

「この度はお父様がお亡くなりになられたようでお悔やみ申し上げます。ところで、お父様が当社より借入れをしていたことはご存知でしょうか。お父様が亡くなられたため相続人であるSさんとTさんが返済義務を相続することになります。つきましては今後の返済方法についてご相談したく、お電話差し上げた次第ですが・・・」

Sさんは驚き、すぐにTさんに確認したのですが、Tさんも父親の借金は知らないということでした。その後、同じような電話が別の消費者金融からも3件あり、SさんとTさんは急いで実家のなかを捜してみると、振込用紙などが見つかりました。結局、父親の借金は5社合計500万円に上ることが判明したのです。

解 説

相続財産には不動産や預貯金などの財産だけでなく、借金などの負債も含まれます。そのため、借金をしていた方が亡くなった場合、相続人が返済義務を負うことになります。相続人がこれを回避するには相続放棄等をすることになるのですが、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所で手続をする必要があるのです。しかし、残された遺族は葬儀や役所への届出、その他諸々の対応に追われるため、仕事を抱えながら行うには時間的制約があり、また今回のようにまったく知らないケースも少なくありません。

結果的に、SさんとTさんは、借金を相続したことになり、返済できる余力もないため自己破産をすることになってしまいました。

今回の件では、SさんとTさんが父親に借金があることを知っていれば、すぐに何らかの対応ができたはずです。

生前ご家族に言いにくかったことや、自分の死後にご家族に影響を与えてしまうことなど遺言で遺しておくのはいかがでしょうか。遺言できちんと財産関係を整理し、ご家族に適切な判断・選択をする機会を与えることも大切だと思います。

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岩上公一

代表弁護士 岩上  公一 神奈川県出身 東京弁護士会

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